ジュエリーの「真珠(パール)」はどうやって作られるのでしょうか。
宝石が鉱山の中で何百年もかけて眠っているのとは違い、真珠は殆どが「養殖」。
そして、その真珠のつくられ方を養殖所の方から教えていただき、ものすごくショックを受けました。
「痛そう!」「可愛そう」と思ったというのが正直な感想。
見た目に美しい華やかな真珠が、どうやって作られるか、知ってほしい。
私は慣れてしまいましたし、それを言い出したら他の素材や食べ物も同じだと思いますが、
想像するよりも結構残酷な作られ方をしていることをみなさんに知ってほしい。
真珠を見る目も違ってくると思いますし、もっと一つ一つを大切にしようと思うかもしれません。
この記事を書いた人(プロフィール)

- 名前:ダフネメリア
- 職業:現役のバイヤー
- どのくらい:年間600商品仕入れ
- 2002年から20年ほどのベテラン
真珠は自然に生まれるのではなく、貝に育てさせる

真珠は、貝から「生まれる」ものではありません。
真珠の親貝の中に貝を入れ、真珠貝がその核に分泌液をコーティングします。
真珠貝の体内に、手術によって無理やり異物(核)を入れられた貝は、
その異物を自分にとって害がないように、コーティングしようとします。
海の中では、たとえば砂やエビの赤ちゃんなどが貝の中に入ってきて吐き出せなかった時に、
貝はコーティングして自分の体内に害がないようにしようとする、いわば防衛本能です。
この時に出てくる分泌液が、人間から見て綺麗だったため、
この貝の防衛本能を使ったのが真珠の養殖。
人工的に貝に核を入れ、
その美しい分泌物をその核にコーティングさせて、美しい玉を育てさせる、というもの。
閉じている貝の口をこじ開けて手術をします。
手術する機械は歯医者さんで使われるツールを改良して挿核する業者の方が使いやすいように
カスタマイズして職人ごとに違うのだそう。
ピンセットやメスなどは、歯医者さんで使われるような金属のものです。
それらを使い、貝に手術を施して
核(と別の個体の細胞をひと掛け)入れて口を閉じるのです。
貝の大きさに対して核は、人間にボーリングの球を入れるようなサイズ感。
入れるのは、生殖層だから、子宮にボーリングの球を入れられてしまったみたいなこと。
こうして外科手術を施され、核を入れた後は、貝を海の中に1年ほど入れて、核を真珠貝に育てさせます。
筆者はこの「貝に挿核する」作業が、エイリアンが地球人に
エイリアンと人間の交配種を産ませるために手術をするという映画のシーンを連想してしまいました・・・。
真珠一つ一つを生み出すために、1つの親貝に1〜2つ核を入れます。
想像してみてください。
手術から目覚めたらお腹にボーリング大の球が入っていたら?・・・
そして、その真珠1つを取り出すために親貝は剥かれます(死んでしまいます)。
貝を開けて、身を取り出し、身の中に潜んでいる真珠をとれるようなミキサーのような機械にどんどん剥がして入れていくのだそう。
下の方に真珠が集まるような仕組みのミキサーのようなもので収穫するのだそう。
一つの貝から収穫するシーンは、あれほど美しい珠からは想像もつかない作業を経ています。
真珠1つを作るのに、親貝が一つしんでるんだ、というのが私には結構ショックでした。
真珠に入れる”核”とは?
親貝の中に入れる、分泌液をコーティングさせるベースとなるもの。
それは「貝を丸く削り出したもの」です。
その核にする貝はドブ貝という種類のもの。核も貝でできています。
ちなみに<天然の>真珠の核となるものは、砂やエビの稚魚など。
天然の真珠は中を調べると、上記のような”貝にとってのごみ”だと思われます。
親貝の中でどうやって真珠になるか
挿核された貝は海の中に戻され、1年ほど海の中で真珠を育てることになります。
育てるというか、核をおにぎりのように貝柱の筋力で回しながら分泌物をコーティングしていきます。
たくさん核を回して体内で転がし、分泌液をかけることで真珠層をたくさん巻かせることができます。
たくさん転がして真珠層をたくさん巻くことができれば、その分美しくなります。
(巻き、と言われ、巻いている、巻いていないと評価される)
この、転がすのは貝柱の筋力で回して転がしていきます。
この筋力が強いとまんまるにお行儀良く、なめらかな表面にならずに歪んだ形に仕上がってしまうこともあれば、
筋力が弱くて転がす力が弱い体力のない貝の中で育った真珠は転がされるのも穏やかで、
形が歪まずにそおっと真珠層が巻かれていくものも。
親貝の中で、いかにたくさん転がし、均一に真珠層でコーティングして真円に近いものを生み出すか
が、親貝に求められる仕事です。
真珠の評価 どんな真珠が高くなるのか
親貝の元気さが、真珠をいかに体内で転がせられるかにかかってきますし、
元気だからと言って高く売れる真珠が生み出されるかというと、そうではありません。
真珠の評価の一つに、「巻き」があります。
真珠層が巻いていればいるほど、コックリとした色になり干渉色もしっかりでます。
巻きが甘いと、あまり輝かないのです。
そして、もう一つの評価に「丸さ」があります。
核に大人しく真珠層がコーティングされていけばまんまるに仕上がり、評価が高くなります。
完璧なまんまる(真円)だけを扱うのがmikimotoです。
そして、完璧な真円にならずに、エクボができたり、形が歪になってしまうと、美しくても評価が下がります。
この、歪んだものを「バロックパール」と言います。
親貝の元気が良すぎて、転がし方がお転婆だった場合にもバロックパールになってしまいますし、
親貝がおとなしいとか、死にそうな個体だった場合は転がし方が足りなければ巻かないで仕上がってしまい、
美しくなりませんが(巻きが甘い)、
真珠層が少ない分、中の核を反映して、真円に近く、ラウンドの評価になったりします。
真円でラウンドだけど、巻いていないものも沢山あるということです。
でも、素人目には、「ラウンド」と言ったら評価が高そうに聞こえますが、
ラウンドなのは、巻いていないから、ということもあるので、
ラウンドの評価だからと言って、高価なわけでもないし、
いろんな評価ポイントがあるのが真珠の難しいところ。
真珠を育て終えた親貝の最期
話はそれましたが、
親貝はそうやって真珠の核を体内で転がしたら1年くらいでまた海から上げられ、
剥かれて終了。
育てるだけのために一生を終えます。
日本のアコヤ真珠の場合には、中の貝柱を漁師が珍味として食べるそうですが
2022年現在で20個で2000円くらいの高級食材になっているそう。(相場によります)
筆者も食べましたが、お刺身としていただきました。
歯ごたえがあって美味しく、ホタテより好きかも。
味もしっかりしていると感じました。
でも、足が非常に速く、冷凍などだと味が落ちるらしいので、地元でいただくのが一番おすすめ。
地元で食べたら無くなってしまう程度の量しか取れないらしい。
収穫の時期は11ー2月くらいまでの浜揚げの時期のみ地元で出回って終わるようです。
そして、10・22には「供養する日」だそう。
(海外で取れる真珠は、中身を食べているのか?供養しているのかは不明です。)
あこやの貝柱は知り合いの養殖場の方にお裾分けしてもらいましたが、
供養し、食べられるところはいただき、命をいただいて生み出してくれている真珠に感謝する習慣になっているそうです。
なぜ残酷に感じるのか
宝石は、ほとんどが鉱山の中で長い時間をかけてできたものを、人間が見つけて採掘をします。
琥珀も石も、そうですよね。
しかし、真珠だけはこうして命をいただいてこそ、生み出されています。
あこやや南洋など以外でも淡水真珠では挿核はしないものの中の貝は真珠を体内から取り出すため、死ぬ運命にあります。
牛革やクロコダイル、ミンクなどのファーなどだって革のために養殖されたり捕獲されたりするわけですし、
貝と同じように命をいただいているのでどちらかと言うと、そちらに近いかな、という印象。
買う時も、身につける時も、なんとなくもっと真珠を大事にしようという気が、筆者は増しました。
まとめ
真珠は他の宝石と違い、収穫するために命をいただいています。
1つの真珠でも1つの親貝の命と引き換えに存在するんだなと思うと、お持ちの真珠の捉え方も変わるかもしれません。
このようにして生み出されたことを踏まえ、真珠を選ぶなら「カジュアルに合わせてより素敵に見える」ための
真珠選びのページをまとめてみましたのでご参照くださいませ。
「ベビーパールを普段使いでカジュアルを格上げ」も真珠の関連記事です。